【キャッシュレス 8】EMV コンタクトレスとは?

近年、国際ブランド各社は「EMVコンタクトレス」という規格に対応した非接触型電子マネーの普及が進められています。まずは、EMVの意味と誕生に至った経緯から触れて行きたいと思います。

EMVとは?

EMVとは、国際カードブランドであるVisa International(ビザ・インターナショナル)Matercard International(マスターカード・インタナショナル)が策定したICチップ搭載クレジットカードの統一規格です。両社の頭文字である「M」と「V」に、規格策定当時ヨーロッパでMasterCardブランドを運営していたEuropay International(ユーロペイ・インターナショナル)の「E」を加えて「EMV」と名付けられました。

この統一規格は1998年に策定されました。以降、接触型ICチップを採用したクレジットカードやキャッシュカードは、全世界でEMV仕様のICカードが世界標準となっています。その後EMVには、JCB・American Express・中国銀聯・ディスカバーカードも加入しています。

EMV仕様

EMV仕様は、ICカードタイプのクレジットカードを用いたカード取引のための「ICカードと端末に関する仕様」を定めた国際的なデファクト標準をいいます。

一般にEMV仕様は、通常の外部端子付ICカードの物理的・機能的条件等を規定した国際規格ISO/IEC7816シリーズに準拠しつつ、ICカードと端末の物理的・電気的特性およびハードウェア・インターフェース、ICカード・端末間でやり取りするデータ要素およびコマンド、ICカード・端末間の処理フローなどを定義しています。

EMVが誕生した理由

EMVが誕生する背景には、クレジットカードの不正使用問題がありました。磁気クレジットカードは情報量が少ないという性質上、不正利用されやすくスキミングという方法を使えば、およそ2,000円程度で偽造カードが作れてしまうほど、セキュリティ面は脆弱です。

1990年代にスキミング被害が急増したため、ヨーロッパを中心としてEMVが策定されました。1998年に最初に規格が発表された後、世界各国で実用化され始めました。イギリスやフランスをはじめヨーロッパ諸国では広く普及が進み、現在ではほぼすべてのクレジットカードがEMVに対応しています。

日本でも2001年に導入され、日本クレジットカード協会(JCCA)や全国銀行協会(全銀協)が策定したICカードの仕様は、EMV仕様に基づいて策定されています。

このように、業界で「EMV」と言えばICカード決済仕様を指しますが、他にもApple Payなどで用いられているトークナイゼーションなど様々な仕様を定めていることでも有名です。

EMVコンタクトレスとは?

EMVコンタクトレスとは、NFC Type A/Bを使った電子マネーサービスです。EMVコンタクトレスに対応しているクレジットカードかデビットカードを店舗の決済端末にかざすだけで取引が完了する仕組みです。利用代金は後から請求され、銀行口座から引き落とされます。

代表的なEMVコンタクトレス

  • VISA:VISAのタッチ決済
  • JCB:JCB Contactless(ジェイシービーコンタクトレス)
  • アメックス:American Express Contactless(アメリカンエキスプレスコンタクトレス)
  • MasterCard:MasterCard Contactless(マスターカードコンタクトレス)

現状ではEMVコンタクトレス対応カードを発行している日本のクレジットカード会社は少ないですが、NFC Type A/ Bに対応した電子マネー決済端末に、EMVコンタクトレス対応クレジットカードをかざせば、国内でもNFC Type A/ Bの電子マネーを使うことができます。NFC Type A/B対応の電子マネー端末が日本国内で増えるにしたがって、日本でもEMVコンタクトレス対応カードが増えていくものと考えられます。もちろん、海外でも同じ手順でNFC Type A/ Bの電子マネーを利用できます。

日本の NFC Type A/B 対応のインフラ整備

2020年の東京オリンピックを前に、日本はクレジットカードが安全に使える国になるためのインフラ整備を推進しています。最近では、ICチップ決済とNFC Type A/B決済の両方に対応した決済端末も登場しました。ICチップでの決済は磁気カードでの決済に比べてセキュリティ性が高いため、カード利用者も加盟店(店舗)も安心して取引ができるといわれています。

一部の店舗ではICチップとNFC Type A/Bの両方に対応した決済端末の導入がはじまっていることから、今後は日本でもNFC Type A/Bに対応した店舗が増えていくものと思われます。

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