QRコード決済統一規格「JPQR」の導入により加速するキャッシュレス化

Life(生活)
乱立するQR決済『○○Pay』を統一する「JPQR」が2019年8月1日よりスタート。JPQRは政府の主導で策定された統一規格で、PayPayやLINE Payなど、QR決済サービスを提供する9社が対応する。

また、「JPQR」の実店舗での運用となる「JPQR普及事業」も、8月1日より開始される。

【追記】
2019年10月24日、「QUOカードPay」(CPM:利用者提示型)が対応した。

2019年10月31日、「d払い」が JPQR仕様に準拠した利用者提示型のバーコード/QRコードに切り替わった。

QRコード決済統一規格「JPQR」

一般社団法人キャッシュレス推進協議会:JPQR

一般社団法人キャッシュレス推進協議会
キャッシュレス推進協議会は、国内外の関連諸団体、関係省庁等と相互連携を図り、キャッシュレスに関する諸々の活動を通じて、早期のキャッシュレス社会を実現することを目的とします。

JPQRは、経産省やキャッシュレス事業者などの産官学で構成された「キャッシュレス推進協議会」により整備が進められた。現状では、決済サービスごとにQRコード・バーコードの規格は別々だが、JPQR導入により統一規格となる。

今回導入されるのは、客側がQRコードを提示して店側が端末で読み取る「CPM(利用者提示型)」について。店舗に置かれたQRコードを客側がスマホで読み取る「MPM(店舗掲示/提示型)」は、このタイミングでは統一の対象にならない。

JPQR(CPM方式)への移行を行うコード決済サービス

2019年8月1日(木) 午前3:00から、以下のコード決済サービスがJPQR(CPM方式:利用者提示型・バーコード)への準拠を行う。(既にJPQRに準拠しているサービスも含まれている)

  • au PAY(KDDI)
  • OKIPay(沖縄銀行)
  • はまPay(横浜銀行)
  • ゆうちょPay(ゆうちょ銀行)
  • YOKA!Pay(ふくおかフィナンシャルグループ)
  • メルペイ(メルカリ)
  • 楽天ペイ(楽天)
  • LINE Pay(LINE)
  • りそなウォレット(りそな銀行、埼玉りそな銀行)
銀行Pay:OKIPay、はまPay、ゆうちょPay、YOKA!Pay、J-CoinPayなどを総称して「銀行Pay」と呼ばれている。

なお、年内にさらに6サービスがJPQRに準拠する予定。

実店舗によるJPQR普及事業(2019年8月1日~2020年1月31日の半年間)

キャッシュレス推進協議会が策定したコード決済統一規格「JPQR」の実店舗での運用となる「JPQR普及事業」が、2019年8月1日より開始される。まずは実証実験に近い形として、岩手県、長野県、和歌山県、福岡県の4県で開始し、その後順次全国に展開していく予定となっている。(のちに栃木県が参加して計5県となった。栃木県の実施期間は2019年10月1日~2020年6月30日の9ヶ月間)

実証期間中は決済手数料を優遇するなどして、地域のスーパーや商店街など、県内の店舗全体の2〜3割でQRコード決済ができる環境を整備。キャッシュレス化による店舗での業務効率化や消費者の利便性向上についての効果を検証する。

JPQRに対応する事業者

「MPM方式」について、8月1日にJPQRへの対応を開始するのは以下の3事業者のみ。

  • Origami(Origami Pay)
  • みずほ銀行(J-Coin Pay)
  • merpay(メルペイ)

その後、10月1日に以下の3事業者が対応開始となる。

  • KDDI(au Pay)
  • ゆうちょ銀行(ゆうちょPay)
  • 福岡銀行(YOKA!Pay)

残るLINE Pay(LINE Pay)とNTTドコモ(d払い)は現時点で開始時期を調整中として明確にしていない。

PayPayは、今回のMPM方式の対応サービス一覧に名を連ねていない。「PayPay」はCPM方式のみ対応する。最終的には全9事業者が参加するが、MPM方式に関してはPayPayを除いた8事業者が参加する。

アプリストアで「PayPay」をダウンロードする 「PayPay」の加盟店申込はこちら(店舗へ導入)

PayPayは、中国「Alipay」との協業でQRコードを共通化したことで、PayPayのQRコードを読み込んでAlipay支払いができるようになっている。すでに独自の加盟店開拓を進めているPayPayにとっては、JPQR普及事業におけるコードの共通化は難しい。そのため、MPM方式での参加は見送った(CPMには対応した)ようだ。

なお、5県のコンビニ(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)は、利用客がスマホに表示したコードを店舗側がPOSレジで読み取る「利用者提示型(CPM:Customer-Presented Mode)」のJPQRにも対応。これは8月1日を目処に、各事業者が一斉に対応する方針。このCPM方式には「PayPay」も参加する。

決済事業者は、NTTドコモ(d払い)、Origami(Origami Pay)、KDDI(au PAY)、福岡銀行(YOKA!Pay)、PayPay(PayPay)、みずほ銀行(J-Coin Pay)、メルペイ(メルペイ)、ゆうちょ銀行(ゆうちょPay)、LINE Pay(LINE Pay)の9社。また、店舗売上一括管理画面提供事業者として、マネーフォワードが参加する。

MPM方式の場合、JPQRが発行した店舗ごとのQRコードが店頭に張り出され、その下に対応する決済事業者が表示される。利用客は支払い時にコード決済であることを告げて、自分の使っている決済サービスアプリを選んで店舗側のJPQRを読み取り、金額を入力して支払いを行う、という手順を踏むことになる。

統一規格「JPQR」が登場した背景

JPQRが登場した背景には、乱立するQRコード決済の問題がある。

コード決済が盛んな中国では「支付宝(Alipay)」、「微信支付(WeChat Pay)」の2大勢力にほぼ集約されたが、国内では、今回の普及事業に参加しただけでも9事業者となり、それぞれが加盟店開拓やキャンペーン合戦を繰り広げ、利用客はどのサービスを利用すればよいか迷ってしまう。

今回の普及事業でのMPM方式の店舗では、決済を1つのQRコードで行なえるようになる。これによって、これまでのように複数のQRコードから自分が使いたい決済事業者のものを探し、アプリを起動し、読み取る、といった必要がなくなる。店舗側も、手間を最小限にして複数事業者と契約でき、キャッシュレス化を容易に進められる。

2種類の決済方式:「利用者提示型」と「店舗提示型」

QR決済には、「利用者提示型」と「店舗提示型」の2種類の方式が存在する。

「利用者提示型 (CPM:Consumer Presented Mode)」
CPMは、客側が表示したスマホのQRコードを店舗の端末で読み取って決済する。

「店舗掲示型 (MPM:Merchant-Presented Mode)」
MPMとは、店舗に置かれたQRコードを客側がスマホで読み取って決済する。

追加情報

2019年10月24日、デジタルギフト「QUOカードPay」が「JPQR」(利用者提示型・バーコード)に対応した。

「QUOカードPay」は、クオカードが発行するスマートフォンで使えるデジタルギフト。専用アプリのインストールや口座登録等が不要で、送られてきたURLをタップし、バーコードを表示するだけで使えることが特徴。

LINE、ドコモ、メルベイによるモバイルペイメントにおける加盟店アライアンス「MoPA」

コード決済事業者が業務提携し、キャッシュレス決済の普及推進に積極的に取り組む動きも活発化している。

2019年6月27日、LINE Pay株式会社と株式会社メルペイが設立したモバイルペイメントにおける加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」に株式会社NTTドコモが参画し、3社はキャッシュレスの普及促進を目的とした業務提携に関する基本合意書を締結した。

「MoPA」のシンボルとなるロゴは、4つのスマートフォンをモチーフに、スマホ決済事業者が協力しあって推進していくことを表現している。

3社の協力はあくまで加盟店開拓とQRコードの共通利用について。LINE Payとメルペイの業務提携によるMobile Payment Allianceは2019年3月に発表されていた。

【追記】
2019年9月18日、KDDIの「au PAY」がMoPAに参画し、キャッシュレスの普及促進を目的とした業務提携に関する基本合意書を締結したことが発表された。

業務提携内容について

本業務提携を通じ、今後四社は店舗・事業者に対し、各社が提供するモバイル決済サービス「LINE Pay」「メルペイ」「d払い」「au PAY」の導入の推進を目指す。これにより、いずれか1つのサービスのQRコードを店舗に設置するだけで、4つのサービスを取り扱うことができるようになる。

このMPM方式で相互利用が可能になることで、店舗側にとっては導入時の負担軽減や多くの潜在的利用者の獲得というメリットを享受することができ、利用者にとっては普段利用しているサービスで支払いができる店舗が拡がるという。

携帯キャリアのライバルであるドコモとKDDIがスマホ決済では協力し、ソフトバンク系のPayPayに対抗するという構図が、より鮮明になったと言える。

各社のこれまでの取り組み

LINE Pay
LINE Pay株式会社は、2014年12月より日本をはじめ全世界でモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を提供している。また、2018年11月には、国内加盟店の店頭決済活性化のため、中国「WeChat Pay」、韓国「NAVER Pay」および台湾、タイの「LINE Pay」とも連携し、ユーザーと国内加盟店をコネクトする『LINE Pay Global Alliance』構想を発表している。今月、韓国「NAVER Pay」とのサービス連携を開始、韓国決済サービスの「payco」とも新たに提携するなど、国内外におけるアライアンス構想の実現に向けて本格始動している。

メルペイ
株式会社メルペイは、2019年2月に「メルペイ」の提供を開始。以来、「メルペイ」の利用拡大のみならず、国内におけるキャッシュレスの普及加速を目的に「OPENNESS」戦略のもと業種・業界を超えた中立でオープンなパートナーシップを推進しており、既に三井住友カード株式会社、KDDI株式会社、株式会社ジェーシービーと基本合意書を締結している。

d払い
株式会社NTTドコモは、2018年4月に「d払い」の提供を開始。以来、dポイントの強みも活かした加盟店拡大やサービスの拡充を進めている。2019年秋以降には送金機能を含む「ウォレット機能」とd払いアプリ内で加盟店のアプリも利用可能となる「ミニアプリ」の追加も予定している。

au PAY
「au PAY」は、2019年4月9日よりKDDI株式会社が提供を開始した「au WALLETアプリ」から利用できるQRコード決済サービス。同社が従来から提供しているQUICPay+やクレジットカード決済と同じ「au WALLET残高」を利用できる。2019年8月29日よりauスマホ以外の方でも使えるようになった。

「MoPA」は、2019年12月19日に活動を終了

LINE Pay、メルペイ、d払い、au Payを展開する4社が結んでいた加盟店アライアンス「MoPA」は、2019年12月19日に活動を終了した。LINE Payの今後のサービス方針転換が主な要因。詳細は、以下の記事にまとめられている。

コメント