NFCとは?
NFC(英語:Near Field Communication、日本語:近距離無線通信)とは、RFID(Radio Frequency IDentification)と呼ばれる無線通信による個体識別の技術の一種です。
NFCは、13.56 MHzの周波数を利用する通信距離10cm程度の近距離な無線通信技術を統一化した世界共通の規格です。触れるか触れないかという至近距離で通信を行う仕組みで、基本的におサイフケータイやApple Payなどの非接触型ICカード技術は、NFCの技術が使われています。
NFCには様々な規格があり、オランダのフィリップスが開発した比較的安価で使用できる「Type A」、アメリカのモトローラ社が開発したセキュリティレベルの高さから住基カードや運転免許証に使われることの多い「Type B」、ソニーが開発した日本で広く利用されている「Type F」の3種類があります。
基礎となるのは、国際標準規格ISO/IEC18092(NFCIP-1)です。このNFCIP-1の策定を機に、NXPセミコンダクターズ社 (旧フィリップスセミコンダクターズ社)・ノキア社・ソニーの3社が設立メンバーとなり、業界標準団体NFCフォーラムが発足しました。
世界各地で利用されている3つの異なる非接触ICカードの技術をまとめることによって、国際的な互換性を実現し、ユーザーの利便性の向上・市場の拡大・アプリケーション開発の促進、を図ることを目的としています。
非接触ICカードの国際標準規格ISO/IEC 14443に規定されるType-A、Type-Bの通信技術を、それぞれNFC-A、NFC-B、そして日本工業規格JIS X 6319-4に基づくFeliCaの通信技術をNFC-Fと称し、NFCフォーラムでは、「NFC-A、NFC-B、NFC-F」の3つの通信技術を等価に扱うグローバルな互換性を実現しうる仕様開発が行われています。
近距離無線通信技術の国際規格:4種類
近距離無線通信技術とは、先程説明したように13.56MHzの周波数帯を利用した無線通信規格のことですが、この技術の国際規格は大きく4つに分けられます。
ISO/IEC 14443
近接型(Proximiy)非接触ICカードの国際標準規格。電磁誘導を利用しており交信距離は最長で10cm程。通信インタフェースの仕様によりTypeAとTypeBの2種類が存在します。
Type Bは、アメリカのモトローラが開発したものです。日本では個人番号カード(マイナンバーカード)、住民基本台帳カード、自動車運転免許証、在留カード、パスポートなど、公的機関が発行する身分証明書などに採用されています。Type Bは処理速度がType Aより若干遅いのに加え、製造コストもType Aより高くなります。
旅券(パスポート)についてはType A/Type Bのいずれかを用いることになっており、日本国旅券はType Bを採用しています。
この他、かつてType Cとしてソニーが開発したFeliCaが提案されていましたが、規格化されませんでした。それ故、古い資料ではType Cと書かれていることもあります。これは後にISO/IEC 18092として標準化されることになります。
ISO/IEC 18092(NFCIP-1)
ソニー株式会社とフィリップス(現・NXPセミコンダクターズ)は2002年秋、新たな無線通信規格「NFC」の共同開発について合意、国際的な普及と発展を目指し、情報通信システムの標準化機関であるECMA Internationalに原案を提案しました。そして、2002年12月にECMA-340として登録された後、同規格はECMAからISO/IEC JTC1へ提案され、各国での審議と投票を経て国際標準規格ISO/IEC 18092が”NFCIP-1(Near Field Communication Interface Protocol-1)“として承認されました。
なおISO/IEC 18092には、非接触ICカード技術、FeliCaとMifare(ISO14443 Type A)の通信方式が含まれており、両者と通信互換性があります。
データ転送速度については、106kbps、212kbps、424kbpから選択することが可能です。なお、一度NFCで接続した後、別の高速な通信方式に切り替えることも可能です。
NFC関連で、2005年1月に制定されたISO/IEC 21481(NFCIP-2)という国際標準規格もあります。こちらはNFCIP-1の拡張規格で、NFCIP-1、ISO/IEC 14443(Type B)、ISO/IEC 15693 の3種類を包含したものです。なおISO/IEC 15693は利用周波数こそ共通ですが、物流のRFIDタグの用途が主流です。
ISO/IEC 15693
近傍型(Vincinity)非接触ICカードの国際標準規格。通称Type V。交信距離は最長70cmで、フリーゲートシステムや物流の商品に貼るICタグ・ICラベルとして利用されることが多く、一般にはあまり浸透していない規格です。ISO/IEC 14443に比べて、通信可能な距離が若干広いのが特徴です。
NFC の定義
NFCには「国際規格上の定義」と「モバイル決済における定義」の2つがあります。
国際規格上の NFC の定義
国際規格上のNFCの基礎となるのはISO/IEC 18092(NFCIP-1)です。2005年にはISO/IEC 21481(NFCIP-2)がNFCの拡張規格であると定められたため、現在はISO/IEC 18092には「NFC IP-1」、ISO/IEC 21481には「NFC IP-2」という別名が付いています。
NFC対応と言った場合、MifareもFeliCaも「通信に関しては」対応しているので「Suicaは使えないがSuicaの残高は読めるスマホ」というものも存在します。
モバイル決済における NFC の定義
- NFC-A(ISO/IEC 14443/18092)
- NFC-B(ISO/IEC 14443)
- NFC-F(ISO/IEC 18092)
モバイル決済におけるNFCの定義はNFC端末の普及を目指す「NFCフォーラム」が定めたもので、3つはそれぞれ「NFC Type A」「NFC Type B」「NFC Type F」とも呼ばれます。
つまり、「NFCでモバイル決済をする」とは、この3つに対応したモバイル端末を店舗の決済端末にかざし、商品代金を支払うことです。日本ではNFC Type A/ Bを利用した支払いを「NFC決済」、NFC Type Fを利用した支払いを「FeliCa決済」などと区別して呼ぶことがあります。
日本国内と海外のモバイル決済の主流
日本国内のモバイル決済は NFC Type F が主流
日本では2000年代のガラケー時代よりNFC Type F(FeliCa)を使った電子マネーが普及しています。NFC Type A/Bに対応した電子マネー決済端末はほとんどありません。
しかし最近では、日本国内と海外のモバイル決済に互換性がないことが問題視されはじめています。そのため、近年は日本でもNFC Type A/Bに対応した電子マネー決済端末の導入が進んでいます。
海外のモバイル決済は NFC Type A/B が主流
一方、海外のモバイル決済はNFC Type A/Bを利用したものが主流です。海外の小売店に設置されている電子マネー決済端末はNFC Type A/Bにしか対応していない場合が多いので、FeliCaのみ搭載の日本のモバイル端末を海外の電子マネー決済端末にかざしてもモバイル決済は利用できません。
まとめ
電子マネー文化が普及している海外では、現金決済が非対応の小売店も存在します。海外で電子マネーによる決済をする場合は、NFC対応クレジットカードやデビットカードで決済することが可能です。
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